ハブログ~国立大歯学部生による歯科医師国家試験勉強ブログ~

国立大学歯学部生による歯科医師国家試験の勉強内容をまとめるブログです

全部床義歯の咬合採得

咬合採得とは

生体における上下顎の3次元的位置関係(水平的(左右,前後),垂直的)を記録する術式.無歯顎者では,咬合床を用いて行う.咬合採得によって得られた記録により,上下顎と顎関節との関係を咬合器上に再現する.

 

咬合採得の流れ

①咬合床製作

②咬合床試適

③上顎咬合床の前歯部修正

④上顎咬合床の臼歯部修正(咬合平面の決定)

⑤下顎咬合堤の修正(上下的位置関係)

⑥下顎咬合堤の修正(水平的位置関係)

⑦ろう堤の修正

⑧標示線の記入

⑨人工歯選択

 

1.咬合床の製作

・作業用模型上で最終義歯の外形線を記入.必要なリリーフ,ブロックアウトを行う.

・基礎床…咬合床の基底部をなす.最終義歯の外形に合わせて製作される.一般的に,常温 重合レジンを用いる.

・咬合堤…咬合床の上に主にパラフィンワックスで作られる.咬合床の高さによって咬合高 径を,幅,弓形,頬舌的な位置によって,排列位置,口腔諸組織との関係を検査,調節す る.

 

2.咬合床の試適,辺縁の修正

・咬合床の床縁は,製作する義歯の床縁と一致するはず.口腔内で確認し問題があれば修正 する.

・痛みがないように.痛みがあると正確な咬合採得ができない.

・吸着するかどうか.維持安定が悪ければ,うまく咬合採得できない.

 

3.上顎咬合堤の修正

▼仮想咬合平面の決定(前歯部の修正)

前歯部の修正…安静時の上唇下縁を基準に,人工歯の露出度を1~2mmと想定する.
・上顎法:上顎咬合床中切歯部下縁を上唇下縁
から1~2mm露出させる.
・下顎法:上顎咬合床中切歯部下縁を上唇下縁
と一致させる.
・正面からみて瞳孔線と平行に調整する.
 瞳孔線は顔面を正面からみて,遠方を直視した時の左右瞳孔の中点を結んだ直線をいう

 

▼仮想咬合平面の決定(臼歯部の修正)

カンペル平面と平行に調整

・カンペル平面(鼻聴道平面)

:左右いずれかの鼻翼下縁と両側の耳珠上縁とによって形成される平面

・実際の臨床には,耳珠下縁を選択する場合も多い

 

▼咬合床形態の付与

・アーチ,豊隆度の修正

・咬合堤の唇側部による口腔側から上唇への支え(リップサポート)が適切であるか

 

4.下顎咬合堤の修正(顎間関係の決定・確認)

 

垂直的顎間関係

・下顎咬合床を調整することで決定する.

・形態的根拠は,有歯顎時代のものを参考にしたものが多く,生理的根拠に基づくものは,

機能が正常である場合に参考になるものが多い.患者の状態を考慮し,複数の方法をもと

に情報を集めて,確認,決定する.

 

1.形態的根拠を用いるもの

(1)使用中の義歯を利用する方法
:使用中の義歯を装着し、咬頭嵌合の状態で側貌、および正面像を参考にする。オトガイ部皮膚に印をつけ、ノギスで距離を計測し、咬合床を装着した状態でその距離を再現する。(2)顔面計測法
①Willis法
有歯顎者の下顎安静位においては、瞳孔から口裂までの垂直的距離と鼻下点からオトガイ底までの距離が等しいという根拠から、それを利用して無歯顎の咬合高径の一助とする方法である。
②Bruno法
鼻下点からオトガイ底までの距離は、その患者の手掌の幅径と等しいとする方法である。
③McGee法
眉間正中点から鼻下点までの垂直的距離、瞳孔から後列までの垂直的距離、口裂線の彎曲に一致した左右口角間距離のいずれもが等しければ、またはいずれかの二者が等しければ、その値をもって鼻下点からオトガイ底までの垂直的距離にする方法である。

2.機能的根拠に基づく方法

(1)下顎安静位利用法 
:下顎安静位にある時の上下顎の間隙である安静空隙は2~3mmである。それを利用して下顎安静位の咬合高径を計測し、そこから2~3mm引いた値を咬合高径として設定する。
(2)発音利用法
 ①s音利用法:s音の発音で最小発音空隙がみられるように設定する。
 ②m音利用法:m音の発音では下顎は下顎安静位に近くなるため、安静空隙を利用する。
(3)最大咬合力計測法
:上下顎間距離(咬合面間距離)が約5mmのとき、咬合力は最大となる。それを利用して最大咬合力を発揮する咬合高径を計測し、そこから約5mm減じたものを咬合高径として決定する。
(4)嚥下運動を利用する方法
:嚥下時の下顎位は上下的・水平的にほぼ一定しているため、これを利用する。

 

仮想咬合平面の決定

1.上顎咬合堤の修正

:まず上顎咬合床を入れて仮想咬合平面をつくる。
(1)前歯部の修正
①咬合床の試適
まず、上顎咬合床を口腔内に装着して、咬合堤の咬合面を一側ずつ押さえて、安定性を点検する。また、床縁の形態や長さが適切であることと、良好な維持が得られていることを確認する。
②リップサポートの検査
次に、上唇の状態を正面と側面から観察して、咬合堤の唇側部による口腔側からの上唇の支えが適切であるかどうか、検査する。咬合堤の唇側のワックスを削除したり、追加したりして、調整する。
③前歯部の垂直的高径の決定
わずかな開口位で、上唇下縁から1mm程上顎ろう堤が露出するようにする。このとき、咬合平面板を用いて、正面から見て瞳孔線と平行になるようにする。

(2)臼歯部の修正

:仮想咬合平面と、頭蓋、顔面の各種基準平面との平行関係、傾斜関係を参考にしながら、臼歯部の高さを調整する。
口腔内に装着された上顎咬合床の咬合平面に咬合平面板をあて、基準平面との平行関係ないし傾斜関係を検査する。
仮想咬合平面を設定するための水平基準面として、以下のものがある。  

①カンペル平面(左右いずれかの鼻翼下縁と、両側の耳珠上縁)

:健常有歯顎者の咬合平面とほぼ平行であるが、歯列の咬合平面は、鼻翼下縁    と耳珠下縁とを結んだ左右の直線で決定される平面と最も近い平行関係にあるという報告も見られ、実際の臨床には耳珠下縁を選択する場合も多い。    
②HIP平面(切歯乳頭頂と、ハミュラーノッチ底部)
③フランクフルト平面(眼窩点と、耳珠上縁)


水平的顎間関係 

(1)筋疲労を利用する方法

下顎を前に出させ、後方に引かせ、左右に動かさせたり、開閉口運動を何回も繰り返させる。すると筋は疲労し、過度な緊張などがほぐれ、偏った下顎位をとらなくなる。

(2)タッピングを利用する方法

記録が正しいかの確認に用いられる。下顎安静位からわずかに開口させたところからタッピングさせ、早期接触による咬合床の動揺を確認する。

(3)ワルクホッフ小球法

上顎咬合床の後縁正中部にワックスの小球をおき、舌尖で小球を触りながら口を閉じさせると、下顎は後退位に誘導される。

(4)頭後傾法

頭部を少し後方に傾斜させた状態で下顎を閉口させ、前方への下顎の偏位を防ぐ。

(5)嚥下機能を利用する方法

唾液を嚥下し、そのときの上下顎咬合提咬合面の接触した状態を下顎位とする。

(6)咬筋を触診する方法

咬筋が最大に機能収縮するのを触診で調べ、その時の下顎位を利用する。

(7)側頭筋を触診する方法

側頭筋の収縮を皮膚上から左右側同時にふれ、正しい下顎位を鑑別しようとする方法。

ゴシックアーチ描記法

定められた咬合高径における下顎の水平的な左右側方限界運動路を描記し,

その軌跡から水平的な顎間関係の決定や診断をする方法。

口外法,口内法

描記針(スタイラス),描記板

最後退位から前方,左右側方運動とタッピング運動をさせる

 

頭頸部動脈の名称

総頸動脈→内頸動脈

 ↓

外頸動脈

 →上甲状腺動脈

 →舌動脈

 →顔面動脈

 →上行咽頭動脈

 →胸鎖乳突筋枝

 →後頭動脈

 →後耳介動脈

 →顎動脈→下顎枝部で分枝:深耳介動脈、前鼓室動脈、中硬膜動脈、

              歯槽動脈(→顎舌骨筋枝、オトガイ動脈)

     →翼突筋部で分枝:咬筋動脈、深側頭動脈、翼突筋枝、頬動脈

     →翼口蓋窩部で分枝:後上歯槽動脈、眼窩下動脈

               下行口蓋動脈、蝶口蓋動脈

 →浅側頭動脈